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2007/07/30

夜でも「おはよう」という学生たち

人間、身近な変化にはなかなか気づきにくいものだ。以下の話も、おそらく前からそうだったにちがいないのだが、つい最近までまったく気づかなかった。

「おはよう」は朝の挨拶。これはたぶん、現代日本語としては今でもまちがってないと思う。少なくとも私にとっては何の疑いもないことだし、きっと日本語学校なんかでもそう教えているだろう。

もちろん、そうでない場合があることは知っている。よく聞くのは、芸能界の話だ。どんな時間でも、最初に会ったときには「おはようございます」という、とよく聞く。時間に関係ない仕事だからなんだろう。いわゆる符丁の一種であって、「業界人」たちがこれ見よがしに使うようなイメージがあった。

ところが最近ふとしたきっかけで、学生たちがこれを使っていることに気づいた。昨年どうだったかについてはあまり記憶がない。今年から急に始まったということもないだろうから、以前からそうだったんだろうが、かといってそれほど前にさかのぼるほどのものでもない気がする。さかのぼったとしてもここ数年、といった感じだろうか。

要するに、朝はもちろんだが、昼間でも午後でも、人によっては夜でも、会ったときには「おはよー」なのだ。同僚数名に聞いてみたら、「そういわれれば確かに」と。芸能界の符丁をまねしているのだろうか。ゼミの学生に聞いてみたら、どうも複数の要素がからんでいるらしい。

(1)アルバイト先で使っていた
どうも一番有力なのはこれ。アルバイト先では昼でも夜でも「おはよう」だからそれに慣れた、という意見が多かった。これは興味深い。私の知る限り、いわゆるふつうの事務職の職場では、昼に「おはよう」ということはあまりないように思う(ちがっていたらご教示願いたく)。学生がアルバイトしそうなあたりというと、コンビニとか飲食店とかなんだろうか。学生たちが口をそろえていうあたりからして、この種の職場ではすでに、時間に関係なく「おはよう」を使う習慣が幅広く普及しているらしい。9to5ではなく、営業時間内に従業員がどんどん入れ替わっていく職場だから、挨拶を「おはよう」で統一したほうが楽、ということか。要するに、日本の企業社会の中で、この「おはよう」一派が静かに、しかし確実に、しかも急速に、勢力を伸ばしているらしいのだ。

(2)大学に入ったらみんな使っていた
上記と関連して、大学に入ってからアルバイトを始める人が多い関係で、大学で初めてこの用法に触れたという学生がけっこういた。違和感を感じている学生もいるが、慣れてしまう傾向が強いようだ。特にアルバイトをしている人たちは、アルバイト先でのことば使いが癖になってしまうことがよくある。その昔私も挨拶をしようとして「いらっしゃいませー」と言ってしまったことがあるし。高校でもバイトしてたからそのころから使っていたという学生もいたのだが、多くの学生は「大学デビュー」なわけで、全体として「大学から」ということになる。しかしこれもだんだん下のほうへ移動していくだろうから、早晩高校生やら中学生やらが言い出すにちがいない。

(3)親近感を感じる
普及することばには、それなりの背景がある。単にみんなが使っているからという理由ばかりでもなかろう。時間に関係なく「おはよー」を使う学生たちの中には、この表現に対して「こんにちは」や「こんばんは」といった一般的な挨拶よりも親近感を感じる挨拶だ、と感じる人たちが少なくない。「よー」と伸ばす感じが好まれているのだろうか。私の世代だと「ちわーっす」ぐらいの感じか。音が3つで言いやすい、なんて言語学的なあたりがあるかどうかはぜひ専門家の方のご意見を伺いたいところ。いずれにせよ親しい間柄の挨拶のようで、OBやOGに対しては使わない、という学生もいた。

教員としては、就職の面接では使うなよと言いたいところだが、個人的にはさほど抵抗感はない。自分で使おうとは今のところ思わないが、へぇそうなの、ぐらいに受け止めることはできる。ひょっとして、20年ぐらいたったらこの用法がすっかり標準の日本語になったりしてるかもしれないじゃん。もしそうなら、ことばの変化の「現場」に居合わせたというレアな経験ではないか。このサイトのキャッシュが「古文書」になるかもしれない。

そう考えると、ちょっと楽しい。宝箱を木の根元に埋めたような気分。さてどうなるかな。

by 山口 浩

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コメント

学生さんも使用してるんですか。ブログで中高年の方がアルバイト先で夜でも・・・・・と言われて面食らったと書かれてましたが。
2と3の理由も納得できます。若い頃にバンドやってましてそのように使用するもんだと言われて違和感なく使用してましたが・・・。
ちなみに札幌では、午前中の挨拶は、「おはようございました」これも最初は戸惑いましたが、言われてみれば一理ありかな。

投稿: westside | 2007/07/31 09:55

僕は違和感を覚えるんですが、「おはよう」だけ「ございます」が使えることがあるんじゃないのかなと思っています。所謂ギョーカイってどんな(身分、地位)人に会うかわからない時にデスマス調で会える。「初めまして」って言ってももう明日は関係ないかも知れない…。なので「おはようございます」が万能な挨拶になったんじゃないのかな。若い人達が使うのはわかりませんが…。「おつかれ〜」って朝言われるのも嫌です。

投稿: grounder | 2007/07/31 13:19

ずいぶんと軽い感じで使うんですね?
「こんにちは」「こんばんは」では敬語感が足りないので、
目上の人にあえて「お早うございます」と言う事はありますが。
(27歳・男性)

投稿: Tezooka | 2007/08/01 22:38

山口です。コメントありがとうございます。

westsideさん
少なくとも東京では、比較的最近のことなのではないかと思うんですがどうでしょう?

grounderさん
「おはよう」だけ『ございます』が使える」というのはなんだかやけに説得力のある説明ですね。学生たちは親近感を感じるというほうが多かったんですけど。

Tezookaさん
なるほど。親近感よりもていねい感、ということですか。このあたり、学生たちの意識とは反対方向ですね。いや面白いです。

投稿: 山口 浩 | 2007/08/07 18:25

分かります。
ワタシは、普通の会社員なのですが、大学生に会う機会がとても多い職業をしています。
たぶん「おはようございます。」はバイトの名残かと。
仕事の現場に入った時の最初の挨拶と位置づけているのかな、と思っていました。
他にもワタシには気になるものが。
「お疲れ様で~す。」と挨拶されます。
仕事も一緒にした事がないし、第一声にそんなことを言われる筋合いがないのですが。
学生同士でも使っているようです。
なんだか20歳を過ぎても親のスネをかじっている反発から、ちょっと大人びた事を言ってみたいのかな~と微笑ましく見ています。

投稿: ヒーコ | 2008/07/13 22:46

ヒーコさん、コメントありがとうございます。
>なんだか20歳を過ぎても親のスネをかじっている反発から、ちょっと大人びた事を言ってみたいのかな~と微笑ましく見ています。
そういう部分はあるのかもしれません。特に「お疲れさま」はバイトの影響でしょうね。どこぞの新聞とかだとすぐ「若者が疲れるのは現代の競争社会が」みたいな話に行きそうですけど。

投稿: 山口 浩 | 2008/07/14 15:43

現在高校3年生なんですが、僕は中2の頃くらいにふざけて午後でも「おはよう~」って言い始めたのがきっかけです。
最初の頃は「なんでおはよう?笑」みたいなこと言われてたんですが、いつの間にか学校で流行っていました。

もしかしたら自分から流行ったのでは?とこれを見て思ってしまいました。笑

いつくらいからこのようなことが起きていたかすごく気になります。
中2の時のことなんで、同級生に聞いてもいつの間にか言ってたよ。って人しかいません。
6年前以上前から言われてるのであれば自分からじゃないって言えるんですけどね ;(

いつからか、詳しくわかりませんかね?

投稿: みどーぐりん | 2010/03/11 20:56

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