« 愛と勇気と、サム・マネー | トップページ | 今月の漢字(2009年1月):「祈」 »

2009/01/29

新ゼミ生課題作品:エッセイ「私の人生最大のピンチ」1

駒澤大学GMS学部山口ゼミでは、2009年度ゼミ生募集に際し、課題作品の提出を求 めました。ここでは提出作品を順番にご紹介しています。エッセイ部門の課題は「私の人生最大のピンチ」です。これはわっふるさんの応募作品です。
(担当山口)

昨年、旅行でベルギーに行った時の話です。

その日はベルギーの有名な様々な観光地をまわっていたのですが、自分たちが滞在していたホテルからかなり遠くてユーロスターという新幹線みたいな乗り物に乗ってベルギーのブリュッセルまで行かなければなりませんでした。新幹線みたいなものなので、チケットは行きのも帰りのももちろん事前に買っていて、乗車時間・座席などは全て決まっていました。

そしてあの有名な小便小僧を見たり本場のベルギーワッフルを食べたりと私たちはベルギーを満喫し過ぎてしまい、帰りに乗らなければいけないユーロスターの時間が迫っていることに気づきました。電車もバスも良く分からなかったし時間もなかったので、私たちはタクシーを捕まえてそのユーロスターの駅まで行きました。

タクシーに乗り込み、運転手に行き先と”自分たちには時間がないから急いで欲しい”ということを伝えたら、彼はとても張り切ってしまって車の交通量がものすごく多い車道をだいたい時速130キロぐらいで走り始めました。しかも車道には基本的に車線が書かれていなかったので、対向車や隣の車をスレスレで避けながらの走行でした。30秒おきにはガタンッという音と車体が若干揺れた感覚があったので、あれはもしかしたらたくさんの車とぶつかっていたのかもしれません。

その恐怖の走行を終えて、なんとか全員無事に駅に着きました。しかし体は無事でも、私たちには時間がありません。駅に着いたのはいいのですが、この駅は日本の東京駅ぐらいの規模のものだったので自分たちが乗りたいユーロスターのホームにはすぐに行けません。先ほどの時速130キロの冷や冷やの走行を終えたばかりの私たちは、そのホームまで全速力で走りました。

この時点でタイムリミットまであと2,3分です。人ごみの中長い階段を上ったり下ったりしてやっとユーロスターの姿が見えました。しかもまだ停車しています。私たち全員はおそらく同じタイミングで間に合ったと思ったのでしょう。息もだいぶあがっていて体力的に限界がきていたので乗車口まで歩いて向かっていたら突然電車が”プシュー”といってドアがゆっくり動きだしました。とっさに私たちのうちの一人が走り出して自分の体でドアが閉まるのを制御しました。そうしたらさすがにドアは再び開き、私たち全員が無事に念願のユーロスターに乗ることができました。

数々のピンチを乗り越えて来て私たちは本当にくたくただったので、後は一刻でも早く自分たちの席に座ってゆっくりと休みたいと思いチケットに書いてある自分たちの席を探していました。しばらく車内を歩き回って探していたのですが、書いてある席が見つかりません。

車掌さんらしき人に聞いたら、笑いながら車両が違うと言われました。私たちは全部の車両を探し回ったつもりでいたのでそんなはずはないと伝えたら、このユーロスターは途中で、ある車両を境に2つに分かれて別々の終点へ向かうと教えられました。要するに自分たちが乗った車両では、帰らなくてはならない場所にはたどり着かないということです。

それを聞いた瞬間全身を寒気が襲い、尋常じゃない冷や汗が一気にでてきました。どうすれば良いのか聞いたところ、次に停車する駅で前の車両に乗り換えるしかないと言われました。そのタイミングを逃したらもう違う方向に行ってしまうと言われました。しかも不運なことに自分たちがいた位置はほぼ最高尾だったのでだいぶ前に行かないといけなくて、さらに車内だけではその自分たちが乗りたい前の車両により近い所にも行けなかったのです。

結局、次の駅に着いた私たちは限られた短い時間で再び全速力で4,5両分ホームを走り、本来乗りたかった乗り物に乗ることができました。そこからは何のトラブルもなく、ホテルに帰れました。

海外旅行にトラブルは付き物と言いますが、ここまでピンチにピンチが重なるとは思いませんでした。今となっては笑い話的な要素も含むことができますが。全く知らない地でもしタクシーで事故にあっていたら、もしくはもしユーロスターに乗れていなかったら、乗れていても全く違う終点に着いていたら…思い出しただけで、ゾッとします。

しかし、その数々のピンチを乗り越えられたのは私たち全員が体をはったからだと思います。軽い衝突事故に遭いながらも駅へ向かったこと、昔運動会でも出せなかったぐらいの自己最速記録レベルの長距離ダッシュ(しかも荷物を持ちながら)、閉まるドアを体で(手ではありません)制御してさらに再び開けさせる根性など、全てがあったから乗り越えられました。

どんなことに関しても余裕を持って行動すること、それがこの事件で私が学んだ1番の教訓でした。それともう1つ、身をもって感じたことがあります。”ピンチの時は諦める前に体を張れ。そうすれば乗り越えられることだってある”

----------------

なかなかインパクトの強い経験ですねぇ。あ、ベルギーだからペンネーム「わっふる」なわけか。

テーマがテーマなので、笑えるものばかりではなかろうと思ってはいましたが、これはなかなか。「30秒おきにはガタンッという音と車体が若干揺れた感覚があったので、あれはもしかしたらたくさんの車とぶつかっていたのかもしれません」なんていうのはしゃれにならんですな。かの国ではそういうのがあまり問題にならないんでしょうか。

とはいえ、それ以外の部分は、まあなんとかなりそうな気がします。こういう経験、旅先ではけっこうありますね。動き出している列車のドアをこじ開けるのはけっこう危険ですので、こういう無理はぜひ避けていただきたいところ。その日宿に帰れないぐらいはどうにかなるもんですし。その意味で、「ピンチの時は諦める前に体を張れ」は貴重な教訓ではありましょうが、「ただし無茶はするな」と付け加えときたいです。

|

« 愛と勇気と、サム・マネー | トップページ | 今月の漢字(2009年1月):「祈」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新ゼミ生課題作品:エッセイ「私の人生最大のピンチ」1:

« 愛と勇気と、サム・マネー | トップページ | 今月の漢字(2009年1月):「祈」 »