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2011/01/31

こち駒やだニュース006:ニート対策は小学生から

こんなニュースあったらやだなという架空ニュースをお届けする「こち駒やだニュース」、第6号です。本件の元ネタはこちらの記事。

ニート対策は小学生から 町良くする活動で働く力つける」(朝日新聞2011年1月31日)
働く年齢になっても仕事や学校通学をしない「ニート」の若者を減らそうと、大阪府がユニークな取り組みを始めた。合言葉は「対策は小学生から」。地域とかかわりながら、コミュニケーション能力と問題解決の力を養う試みだ。
(中略)
総務省によると、ニートは全国で約60万人(10年現在)、大阪府内には5万人いるとされる。厚生労働省の調査では、ニートの若者の約半数にひきこもり経験があり、約6割が「人に話すのが不得意」との傾向が見られた。

Kochikomanews006_001

「ニート」ということばを最近よく聞きます。もともとイギリス1999年に出された報告書で使われた「NEET」(Not in Education, Employment or Training)という概念に由来するものですが、日本では若干ちがった意味で、また人によってもいろいろな意味で使われたりしています。共通しているのは、若年層で、教育を受けておらず、労働もしていない、といった要素ですが、どうも最近の日本での使われ方を聞いていると、「働く意欲を持たない人」というニュアンスで語られることが多いように思われます。

この記事にあるような取り組みも、ある意味そうした考えを前提にしているのかもしれません。そしてそうなってしまった要因が、実は子供のころからの経験にあるのではないか、というわけです。記事には、このプログラムを委託されたNPO法人代表の発言を引いて、こう書かれています。

子どものころから、コミュニケーションを通じて問題解決のプロセスを考えることが、「働く」ことへの意識向上につながるという。「就職活動などの人生の岐路に立っても、どうしたら自分が社会に貢献できるか、そのためには何をするべきかが見えてくるはず」と話す。府は新年度も続ける方針だ。

この記事に書かれている「厚生労働省の調査」とはおそらく、2007年の「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書」(長ったらしいタイトルですね)かと思われます。ここには確かに、ニート経験者に対するアンケート調査結果として、49.5%にひきこもり経験がある、64.4%が「人と話すのが苦手」と答えた、などという記載があります。このコミュニケーション能力を養うために、小学生のうちから働く経験をさせよう、という趣旨のようです。

たいへんけっこうな話です。一生懸命取り組んでおられるNPO法人の皆様にはぜひがんばっていただきたいと思います。とはいえ、正直なところ、「コミュニケーション能力」を養うために働く経験を、という理屈はいまひとつよくわかりません。確かに働く経験の中でコミュニケーション能力を養うことは可能でしょうが、それは働く経験だけに限った話ではないはずです。

実際、この報告書の中には、ニート経験者の55%が学校でいじめを受けた経験があり、37.1%が学校時代に不登校を経験したとあります。働く経験もいいのですが、学校での問題をどうにかする方が先ではないかと思うのは私だけではないでしょう。また、49.5%が「精神科又は心療内科で治療を受けた」と回答しています。これがニートになった原因なのか結果なのかはこの調査では調べられていないようですが、ここは調べるべきところです。もし原因であるならば、それが何かをさらに調べて対策を打つことも当然必要であるはずです。

それに、そもそも働く場があるのかという問題も、当然ながらあります。ハローワークで扱った有効求人数を有効求職者数で割った有効求人倍率(季節調整値)は大阪府内で2010年12月時点で0.59倍だそうです。もちろんここには職種や条件に関するミスマッチが多々あり、中には人が足りなくて困っている職場もたくさんあるでしょう。この部分は、働く側の意識の問題もなくはないと私も思います。しかし全体として、現在雇用情勢が厳しく、通常の景気であれば普通に就職できていた人ができないケースが少なからずある、という状況であることは厳然たる事実です。これは、「働くことへの意識向上」でどうなるものでもありません。

もちろん、大阪府は、これらの対策もきちんととっておられるのでしょう。であれば、それもぜひ記事の中に含めてほしいものです。この記事の取り上げ方は、どうしても、「ニートの若者は働く意欲に欠けるから子供のうちから働く経験をさせるのがいい」という図式に見えてしまいます。実際、そう受け取る人は少なくないでしょう。上の世代が下の世代に対して「いまどきの若い者はなっとらん」と嘆くのは、古代エジプトにまで遡るらしい、人類普遍の認知バイアスですから。

子供のうちから働く体験をしてみるというのはとても重要だと思います。ただそれを、ニート対策と銘打ったり、子供が将来ニートにならないようにといった理由で推進するのは、あまりよろしくないと思います。子供に対することは、教育の一環ということでいいのではないでしょうか。そしてニート対策としては、ニートの状態になっている人やそうさせている状況に対して、有効な対策をとっていっていただきたいものです。


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